コレを知らずに初めて口にしたとき、思った通りの味・食感だと言い切れる人間がかつて存在しただろうか。現代日本人では皆無に違いない。キルギス人実習生(20代女性)たちが国から持ってきてくれた「お菓子」、クルトという。キルギスで子供が皆よく食べるお菓子だというので、ミルキーはママの味♪くらいのつもりで軽やかに頬張ると、全然、違う。
しょっぱい、かたい、乾ききっている。
コレを食べながら何を飲むのか尋ねると、男性はビール、女性や子供は水やお茶、だという。お菓子であり、おつまみでもあるようだ、一安心。幼少期からコレをバリボリ嚙み砕いてきた人たちに、柔らかいスゥイーツばかり嗜んできた我々は太刀打ちできないと思いきや、そうでもないらしい。今や様々あるお菓子の一種に過ぎない、とはいえ、幅広い人気の品として長らく受け継がれ続けているのは事実。

クルトの伝統的な製法は、ヨーグルトの水を切り、塩を加えてよく混ぜ、写真のように小さな円筒や円盤・球状に成形して数日間天日干しする。材料は発酵乳と塩のみ。やめられないおいしさ、などとはお世辞にも言いにくいが、かみしめると同時に遠く現地の風景や文化・歴史につい想いを馳せてしまう、味わいがある。

そんなクルトのしょっぱさとは打って変わって、二人の手料理は素材そのままを活かすかたちで、あっさりとしたおいしさ。甘すぎず辛すぎず脂っこくもなく、実際に入れた調味料も少しだけとのことで、日本人に合わせようとしたわけではなく、母国・実家で作るのと同じように作ったという。



日々無知の知。おいしい、おもしろい、ありがたい。