2か国語狂言 EXPOから

万博ヤード。チェコ館にはらせん状の観覧席を備えた講堂があり、週末などさまざまな催しが開かれる。狂言なる伝統芸能を恥ずかしながらこちぇらチェコ館で初めて観たという日本人も少なくなかろう、私もだ。

「柿山伏」

狂言とは台本があり台詞が決まっているものだという。まずチェコの演者さんによる、狂言の基本的な所作や声出し、笑い方や、曲目「柿山伏」のあらすじなどの前説があり、無知な私もそのおかげで俄然楽しませていただいたと後で実感する。次の曲目「口真似」も並び直し、2講演続けて座って観覧することができた。

「口真似」

茂山千五郎家の狂言師は日本語で、チェコの演者さんはチェコ語で演じられる。私は前説で得た付け焼き刃の知識で、わからないチェコ語もわかった気になりつつ、観る。顔には大いなる喜怒哀楽を湛え、大音量を発し、大汗をかく人間の生な姿がそこにある。言語・非言語の、切実な意思伝達。

ベトナム語、インドネシア語、シンハラ語、・・・私たちは普段から外国語にふれている。わからない。通訳を介する。それでわかり合えたつもりに往々にしてなるが、さほど簡単ではない。2か国語どころか母国語同士でさえ(むしろそのほうが)、笑えない狂言を日々演じているのではなかろうか。はじめに言葉ありき、半ばにも終わりにも言葉はあったほうが良いかもしれないが、接近して解像度を上げたり、引いて俯瞰したり、言わば全体のあらすじをつかもうとする努力は、後にも先にも欠かせないことと思う。

https://kyotokyogen.com/about/kyogen/
茂山千五郎家ウエブサイトのページ「狂言とは」から一部抜粋させていただく。
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『狂言』は対照的に“台詞”と“仕草”によって構成されている《台詞劇》です。内容は、特別な階級の人達ではなく当時の一般庶民が登場し、ちょっとした失敗話などユーモラスに富んだ《喜劇》です。
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笑えなければ狂言にはならない。狂言になり得る曲目を、自分なりにも作り増やしたいものだと思う。